「クラウド会計ソフトって、結局のところ何ができるの?」「導入すれば経理がラクになると聞くけれど、本当に自分に合うのか分からない」。会計ソフトの導入を検討していると、こうした疑問にぶつかる方は多いのではないでしょうか。
クラウド会計ソフトは、銀行口座やクレジットカードとの連携、複数端末からの利用、税理士や担当者とのデータ共有などに対応した便利なサービスです。ただし、導入すれば自動的に正しい帳簿が完成するわけではありません。製品ごとに操作方法や料金、対応機能も異なるため、自分の事業や使い方に合ったものを選ぶ必要があります。
この記事では、クラウド会計ソフトの基本的な仕組みから、メリット・デメリット、失敗しない選び方の5ステップまでを解説します。会計事務所で10年以上、記帳や月次処理などの実務に携わってきた経験も交えながら、導入前に確認しておきたいポイントを整理します。
弥生・freee・マネーフォワードの具体的な違いや、個人事業主・法人別の選び方を知りたい方は、「弥生・freee・マネーフォワードを比較|個人事業主・法人別のおすすめを解説」もあわせてご覧ください。
- クラウド会計ソフトの仕組みとインストール型との違い
- クラウド会計ソフトのメリットとデメリット
- 失敗しない選び方の5ステップ
- 無料体験で確認しておきたいポイント
- 会計ソフトを導入しただけでは正しい帳簿が完成しない理由
結論|クラウド会計ソフトは経理を効率化できるが確認作業は必要
クラウド会計ソフトは、銀行口座やクレジットカードとの連携、複数端末からの利用、税理士や担当者とのデータ共有などにより、記帳や経理業務を効率化しやすいサービスです。ただし、導入するだけで正しい帳簿が完成するわけではなく、自動仕訳や残高、取引内容の確認は欠かせません。
料金や機能だけで決めず、事業形態、必要な申告機能、連携先、操作性、継続費用まで確認し、無料体験がある場合は実際の画面を触ってから選ぶのがおすすめです。
クラウド会計ソフトとは
クラウド会計ソフトとは、インターネット経由で利用する会計ソフトです。パソコンにソフトをインストールして使う従来型とは異なり、Webブラウザやスマートフォンアプリなどからアクセスして帳簿を作成します。
クラウド会計ソフトには、主に次のような特徴があります。
- パソコンやスマートフォンなど、複数の端末から利用できる
- 銀行口座やクレジットカードの明細を取り込める
- 入力したデータをクラウド上に保存できる
- 税理士や会計事務所の担当者とデータを共有できる
- サービス側で機能の更新や制度改正への対応が行われる
インストール型の会計ソフトは、特定のパソコンにソフトを入れて使用し、データもそのパソコンや社内サーバーなどに保存するのが一般的です。インターネットの通信状況に左右されにくく、入力時の反応が速い製品もあります。
一方、クラウド型は利用する端末や場所の制約が少なく、データ共有もしやすい反面、インターネット環境やサービス側の処理状況によって操作感が変わることがあります。
クラウド会計ソフトでできること
クラウド会計ソフトでは、日々の記帳から決算・申告に必要な資料の作成まで、経理に関するさまざまな作業を行えます。ただし、利用できる機能は製品や料金プランによって異なります。
代表的な機能は、次のとおりです。
- 仕訳の入力
- 銀行口座やクレジットカード明細の取得
- 取り込んだ明細からの自動仕訳候補の作成
- 残高試算表や総勘定元帳などの帳簿作成
- 決算書や確定申告書の作成
- 消費税申告や電子申告への対応
- 請求書・経費精算・給与計算などとの連携
- 税理士や会計事務所とのデータ共有
銀行やカードの明細を取り込めるため、手入力の量を減らせるのは大きな利点です。ただし、明細を取り込んだだけでは仕訳は完成しません。取引内容や勘定科目が正しいかを確認したうえで、帳簿へ登録する必要があります。
また、「確定申告に対応」「消費税申告に対応」と書かれていても、すべての料金プランで利用できるとは限りません。必要な機能がどのプランに含まれているかまで確認しましょう。
クラウド会計ソフトを使うメリット

クラウド会計ソフトの主なメリットは、明細の取り込みやデータ共有により、記帳や資料の受け渡しを効率化しやすいことです。
銀行やカードの明細を取り込める
クラウド会計ソフトの多くは、銀行口座やクレジットカードと連携し、利用明細を取り込めます。日付、金額、取引先などを一から手入力する必要がなくなるため、記帳の負担を減らしやすくなります。
一度登録した仕訳の内容をもとに、次回以降の勘定科目を自動で提案する機能もあります。同じ取引が繰り返される事業では、入力の効率化につながります。
ただし、自動で提案された仕訳が正しいとは限りません。登録前の確認は必要です。
場所や端末を選ばず利用しやすい
インターネットへ接続できれば、自宅や事務所、外出先などから同じ会計データへアクセスできます。パソコンだけでなく、スマートフォンやタブレットから利用できるサービスもあります。
外出先で領収書を撮影したり、移動中に取引内容を確認したりできるため、まとまった時間を取りにくい個人事業主や経営者にも便利です。
ただし、すべての作業がスマートフォンだけで快適に行えるとは限りません。残高の確認、仕訳の修正、大量入力などは、パソコンのほうが扱いやすいことがあります。
税理士や担当者とデータを共有しやすい
クラウド上に保存された会計データを、税理士や会計事務所の担当者と共有できます。会計データのファイルをメールなどで送る必要がなく、同じ帳簿を見ながら確認を進められます。
会計事務所の実務でも、顧客と同じデータを確認できれば、修正が必要な取引や不足資料を早めに把握できます。データを受け取ってから内容を確認する方法に比べ、やり取りを進めやすいのはクラウド会計の利点です。
アップデートの手間が少ない
クラウド会計ソフトは、サービス側で機能の更新やメンテナンスが行われます。利用者が更新用のソフトを購入したり、パソコンへ新しいバージョンをインストールしたりする手間を減らせます。
税制や申告様式が変更された際も、対応するサービスやプランであれば、アップデートを通じて新しい制度へ対応します。ただし、制度への対応時期や対象機能は製品・プランによって異なるため、公式サイトでの確認は必要です。
請求書や経費精算など周辺サービスと連携しやすい
クラウド会計ソフトは、請求書作成、経費精算、給与計算、POSレジなどの周辺サービスと連携できるものがあります。
たとえば、請求書の発行内容を売上として会計ソフトへ連携できれば、同じ情報を何度も入力する必要がありません。給与計算や経費精算の結果を会計へ取り込めるサービスであれば、仕訳作成の負担も減らせます。
ただし、連携できるサービスが多ければよいとは限りません。自分が現在使っているサービス、または今後導入する予定のサービスに対応しているかを確認することが重要です。
クラウド会計ソフトのデメリット
クラウド会計ソフトには便利な面が多い一方で、料金や動作、操作方法などの注意点もあります。メリットだけでなく、デメリットも確認したうえで選びましょう。
毎月または毎年の利用料金がかかる
クラウド会計ソフトは、月額または年額で利用料金を支払う形式が一般的です。買い切り型の会計ソフトとは異なり、利用を続ける限り継続して料金が発生します。
初年度無料や割引キャンペーンが用意されている場合でも、2年目以降は通常料金になることがあります。導入時の金額だけでなく、数年間利用した場合の総額まで確認しておきましょう。
インターネット環境に左右される
クラウド会計ソフトはインターネット経由で利用するため、通信環境の影響を受けます。回線が不安定な場所では、画面の表示やデータの保存に時間がかかることがあります。
サービス側で障害やメンテナンスが発生した場合、一時的に利用できなくなることも考えられます。常にオフラインで作業したい方や、通信環境が安定していない場所で使用する方は注意が必要です。
動作が重く感じることがある
クラウド会計ソフトは、通信環境やサービス側の処理状況によって、動作が重く感じられることがあります。これは、会計ソフトを選ぶ際に見落とされやすいポイントです。
私は会計事務所の実務で、弥生のデスクトップ版を長く使用してきました。大量の仕訳入力や画面の切り替えが多い業務では、一つひとつのわずかな待ち時間も、積み重なると大きな負担になります。
1件の取引を登録するだけなら気にならない遅さでも、何十件、何百件と続けて入力する場面では、レスポンスの違いが作業時間やストレスに直結します。
クラウド会計ソフトだから常に快適に動くとは限りません。無料体験を利用するときは、機能の有無だけでなく、実際の入力速度や画面の切り替わり方も確認しましょう。
自動仕訳が必ず正しいとは限らない
銀行口座やカードの明細から作られる自動仕訳は、あくまで登録候補です。勘定科目や税区分、取引内容が実態と一致しているとは限りません。
たとえば、同じ取引先への支払いでも、購入した内容によって使う勘定科目は変わります。取引先名や過去の登録内容だけでは、ソフトが支出の中身まで正確に判断できないことがあります。
自動仕訳を内容確認せずに登録し続けると、誤った処理が帳簿に蓄積します。決算や申告の直前になってから修正することになれば、かえって手間が増えるため注意が必要です。
ソフトごとに操作方法や考え方が異なる
クラウド会計ソフトは、製品によって入力方法や画面の設計が異なります。機能が似ていても、使いやすいと感じるソフトは人によって変わります。
freeeと比べると、マネーフォワードや弥生は、勘定科目や仕訳を意識する簿記ベースの考え方に近い傾向があります。一方、freeeは簿記用語を前面に出しすぎず、取引内容から入力を進める独自の設計が特徴です。
会計ソフトは、これまで慣れてきた入力方法によって使いやすさの感じ方が変わります。弥生のデスクトップ版を長く使ってきた私の場合は、勘定科目や仕訳を軸に確認する簿記ベースの画面のほうが理解しやすく感じます。
簿記の知識があまりない方には、取引内容から入力を進める形式のほうが分かりやすいこともあります。反対に、仕訳入力に慣れている方は、勘定科目や借方・貸方を確認しやすい形式のほうが使いやすいことがあります。
口コミだけで決めず、実際に触って自分の考え方に合うかを確認することが大切です。
解約後のデータ閲覧や移行条件が異なる
クラウド会計ソフトは、解約後にデータを閲覧できる期間や、出力できるデータの種類が製品によって異なります。
解約すると会計データを閲覧できなくなるサービスや、保存できるファイル形式が限られているサービスもあります。将来ほかのソフトへ移行する可能性がある場合は、仕訳データ、帳簿、決算書、証憑データなどをどの形式で保存できるか確認しておきましょう。
会計データは、申告が終われば不要になるものではありません。過去の帳簿を確認する場面もあるため、料金や機能だけでなく、解約後の取り扱いも重要な比較項目です。
クラウド会計ソフトで失敗しない選び方5ステップ

クラウド会計ソフト選びで失敗しないためには、料金表を見比べる前に、自分に必要な条件を順番に整理することが大切です。次の5ステップで確認しましょう。
最初に、その会計ソフトが個人事業主向けか法人向けかを確認します。同じ会社が提供する製品でも、個人向けと法人向けでは、作成できる申告書や決算書、料金プランなどが異なります。
たとえば、マネーフォワードには、個人事業主向けの「マネーフォワード クラウド確定申告」と、法人向けの「マネーフォワード クラウド会計」があります。
弥生にも、個人事業主向けの「やよいの青色申告 オンライン」と、法人向けの「弥生会計 Next」があります。freee会計も個人向けと法人向けで料金や機能が分かれています。
名称が似ているサービスもあるため、料金や評判を見る前に、自分の事業形態に対応した製品かを確認しましょう。
次に、自分が必要とする会計・申告機能を整理します。料金が安くても、必要な機能が使えなければ、上位プランへの変更や別のソフトへの乗り換えが必要になります。
主に確認したい機能は、次のとおりです。
- 青色申告への対応
- 法人の決算書作成
- 消費税申告への対応
- e-Taxなどの電子申告
- インボイス制度への対応
- 電子帳簿保存への対応
- 請求書や見積書の作成
- 部門別・店舗別などの管理
「会計ソフトだから申告に必要な機能は全部使える」とは限りません。必要な機能が、どの料金プランに含まれているかまで確認しましょう。
クラウド会計ソフトを導入する大きな目的の一つは、銀行口座やクレジットカードの明細を取り込み、入力作業を減らすことです。
現在使っている銀行やカードが連携対象になっているかを確認しましょう。銀行名だけでなく、法人口座、個人口座、インターネットバンキングの契約状況などによって、連携の可否や方法が異なることがあります。
また、次のような周辺サービスを利用している場合は、連携できるか確認します。
- 請求書作成サービス
- POSレジ
- 経費精算サービス
- 給与計算ソフト
- ECサイトや決済サービス
連携可能なサービス数の多さだけで比べるのではなく、自分が実際に利用しているサービスに対応しているかを確認することが重要です。
公式サイトの説明や口コミだけで決めず、無料体験がある場合は実際に操作して確認しましょう。
体験期間中は、次のような取引を数件ずつ入力してみると、操作の考え方や使いやすさが分かります。
- 売上の入金
- 現金で支払った経費
- クレジットカードでの購入
- 借入金の返済
- 個人事業主の事業主貸・事業主借
入力方法だけでなく、仕訳の一覧、残高試算表、総勘定元帳などの確認画面も見ておきましょう。日々の入力が簡単でも、あとから帳簿を確認しにくければ、修正や残高確認に手間がかかります。
動作速度も重要です。画面の切り替え、検索、連続入力などを試し、ストレスなく使えるかを確認してください。
簿記経験がある方と、会計ソフトを初めて使う方では、分かりやすいと感じる操作方法が異なります。評判だけではなく、自分の感覚で選びましょう。
最後に、導入初年度だけでなく、2年目以降も含めた継続費用を比較します。
初年度無料や期間限定の割引があると安く見えますが、翌年から通常料金になることがあります。長期間使う会計ソフトは、初年度の金額だけで決めないことが大切です。
次の項目まで確認しましょう。
- 初年度無料や割引の適用条件
- 2年目以降の通常料金
- 月払いと年払いの違い
- 必要な機能を使えるプランの料金
- 利用人数を増やす場合の料金
- 追加オプションや従量課金
- 解約後のデータ閲覧・保存条件
最安プラン同士を比較しても、自分が必要とする機能が含まれていなければ意味がありません。実際に利用するプランを基準に、年間の費用を比較しましょう。
個人事業主と法人で選ぶソフトは異なる
クラウド会計ソフトは、個人事業主向けと法人向けで選ぶ製品が異なります。同じ会社のサービスでも、作成できる申告書や決算書、利用できる機能、料金プランが分かれているためです。
ここでは、個人事業主向けと法人向けの代表的なクラウド会計ソフトを紹介します。どれが最も優れているかを決めるのではなく、操作の考え方や対象の違いを知るための参考にしてください。
個人事業主向けの主なクラウド会計ソフト
freee会計
freee会計は、簿記用語を前面に出しすぎず、取引内容を選びながら入力を進める独自の設計が特徴です。勘定科目や借方・貸方に慣れていない方でも、日々の取引から入力を始めやすい作りになっています。
一方で、従来の会計ソフトで仕訳入力をしてきた方は、考え方や画面構成の違いに慣れるまで時間がかかることがあります。簿記経験の有無によって使いやすさの感じ方が変わるため、実際に操作して確認することが大切です。
マネーフォワード クラウド確定申告
マネーフォワード クラウド確定申告は、個人事業主やフリーランスの記帳・確定申告に対応したサービスです。銀行口座やクレジットカードの明細を取り込み、仕訳候補を作成できます。
freeeと比べると、勘定科目や仕訳を意識する簿記ベースの考え方に近い傾向があります。これまで一般的な会計ソフトを使ってきた方や、帳簿を仕訳単位で確認したい方には、理解しやすい場合があります。
やよいの青色申告 オンライン
やよいの青色申告 オンラインは、個人事業主の記帳や青色申告に対応したクラウド会計ソフトです。会計ソフトを長く提供してきた弥生の個人事業主向けサービスで、帳簿や申告書の作成をオンラインで行えます。
会計ソフトは、これまで慣れてきた入力方法によって使いやすさの感じ方が変わります。弥生のデスクトップ版を長く使ってきた私の場合は、勘定科目や仕訳を軸に確認する簿記ベースの画面のほうが理解しやすく感じます。
法人向けの主なクラウド会計ソフト
freee会計
法人向けのfreee会計は、日々の記帳から決算に必要な帳簿の作成まで対応するクラウド会計ソフトです。個人向けと同様に、取引内容から入力を進める考え方を取り入れています。
会計に詳しい担当者だけでなく、経営者や事務担当者が自社で入力することも想定されています。ただし、法人会計では消費税、固定資産、借入金、役員との取引など判断が必要な処理も多いため、入力しやすさと正しい会計処理は分けて考える必要があります。
マネーフォワード クラウド会計
マネーフォワード クラウド会計は、法人の日々の記帳や決算に対応したクラウド会計ソフトです。銀行口座やカードの明細取得に加え、同じシリーズの請求書、経費精算、給与計算などと連携できます。
freeeと比べると、勘定科目や仕訳を確認しながら処理する従来の会計ソフトに近い考え方です。経理経験者が帳簿を確認する場合や、仕訳単位で管理したい場合には、なじみやすいことがあります。
弥生会計 Next
弥生会計 Nextは、弥生が提供する法人向けのクラウド会計ソフトです。日々の取引入力や帳簿作成、決算に必要な会計データの管理に対応しています。
弥生のデスクトップ版を利用してきた方であっても、クラウド版では画面や操作方法が異なる部分があります。従来の弥生製品のイメージだけで決めず、入力方法や動作速度、必要な機能を実際に確認してから選びましょう。
会計ソフトを導入しただけでは正しい帳簿は完成しない
クラウド会計ソフトを導入すると入力作業は効率化できますが、それだけで正しい帳簿が完成するわけではありません。銀行やカードから取得した明細、自動で提案された仕訳、入力した残高が正しいかを確認する必要があります。
会計ソフトは取引の情報を整理し、帳簿へ反映するための道具です。取引の内容や会計上の判断まで、すべて自動で正しく処理してくれるものではありません。
自動仕訳の候補を確認せずに登録してしまう
銀行口座やカードの明細を取り込むと、ソフトが取引先名や過去の登録内容などから勘定科目を提案します。ただし、同じ取引先への支払いでも、購入した内容によって会計処理は変わります。
たとえば、同じ店舗で事務用品を買うこともあれば、私用の商品を買うこともあります。取引先名や金額だけでは、支払いの中身までソフトが判断できないケースがあります。
仕訳候補は必ず確認し、実際の取引内容と一致しているかを見てから登録しましょう。
借入金の返済をすべて経費にしてしまう
借入金の返済額には、元金と利息が含まれています。通常、元金部分は借入金の残高を減らす処理となり、利息部分とは分けて記帳します。
返済額の全額を経費として登録すると、借入金の帳簿残高が減らず、金融機関の返済予定表と合わなくなります。口座から毎月同じ金額が引き落とされていても、返済予定表を確認して元金と利息に分ける必要があります。
リボ払いや分割払いの残高が合わなくなる
クレジットカードのリボ払いや分割払いは、購入時に発生した未払金と、毎月の支払いを正しく対応させる必要があります。さらに、支払額に手数料が含まれる場合は、元本部分と手数料部分を分けて処理します。
毎月の引き落とし額だけを経費として登録すると、購入時の金額や未払残高と帳簿が合わなくなることがあります。利用明細と支払明細の両方を確認することが大切です。
事業用と私用の口座やカードが混ざっている
事業用と私用の取引が同じ口座やカードに混ざっていると、取り込まれた明細を一件ずつ確認し、事業取引か私用取引かを分ける必要があります。
クラウド会計で明細を自動取得できても、取引の区分まで自動で正確に判断できるわけではありません。処理を分かりやすくするためにも、銀行口座やクレジットカードは事業用と私用で分けるのがおすすめです。
現金取引が帳簿から漏れる
銀行やカードの取引は自動で取り込めますが、現金で支払った経費は自動では登録されません。領収書を受け取っただけで安心し、帳簿への入力を忘れると経費が漏れます。
現金取引は、発生した都度入力する、週に一度まとめて入力するなど、記録するルールを決めておきましょう。
手入力と自動取得で二重計上してしまう
カードで支払った経費を先に手入力し、後日取り込まれたカード明細も登録すると、同じ取引が二重に計上されることがあります。
自動連携を利用する場合は、どの取引を手入力し、どの取引を明細から登録するのか、処理方法を統一することが大切です。すでに入力済みの取引がないか確認してから、取り込んだ明細を登録しましょう。
開始残高を誤ると帳簿残高が合わない
年度の途中から会計ソフトを導入する場合や、別のソフトから乗り換える場合は、銀行預金、売掛金、買掛金、借入金などの開始残高を登録します。
開始残高が間違っていると、その後の取引を正しく入力しても帳簿残高は合いません。導入時には、前年度の決算書や直前の試算表、通帳残高、借入金の返済予定表などを確認しましょう。
このように、会計ソフトの操作ができることと、正しい会計処理ができることは別です。判断に迷う取引がある場合は、自己判断で登録を続けず、税理士などの専門家へ確認してください。
クラウド会計ソフトを導入する前に準備すること
クラウド会計ソフトを導入する前に、口座や資料の管理方法を整えておくと、その後の記帳がスムーズになります。ソフトを契約してから考えるのではなく、先に経理の流れを整理しておきましょう。
- 事業用の銀行口座を分ける
- 事業用のクレジットカードを分ける
- 現金取引を記録する方法とタイミングを決める
- 導入時の開始残高を確認する
- 領収書や請求書の保存方法を決める
- 誰が入力し、誰が内容を確認するかを決める
特に、事業用の口座とカードを分けておくと、自動取得した明細のほとんどを事業取引として確認できるため、仕分けの手間を減らせます。
また、現金取引は銀行やカードのように自動取得されません。領収書をどこへ保管し、いつ入力するかを決めておかないと、記録漏れが起こりやすくなります。
法人の場合は、法人名義の口座やカードを利用し、会社の取引と代表者個人の取引を分けるのが基本です。
クラウド会計ソフトに関するよくある質問
クラウド会計ソフトを導入する際によくある疑問をまとめます。
- 簿記が分からなくてもクラウド会計ソフトを使えますか?
-
日々の取引を入力することはできますが、正しい帳簿を作るには最低限の会計知識が必要です。簿記用語を抑えたソフトであっても、取引が売上なのか借入金なのか、支払いが経費なのか資産なのかといった判断まで不要になるわけではありません。
- スマートフォンだけで帳簿を作れますか?
-
取引件数が少ない場合は、スマートフォンを中心に記帳することもできます。ただし、残高の確認、仕訳の修正、総勘定元帳の確認、大量入力などは、パソコンのほうが作業しやすいことがあります。
- 無料の会計ソフトでも十分ですか?
-
必要な機能が無料の範囲に含まれており、取引件数やデータ保存期間などの制限が問題にならない場合は選択肢になります。ただし、確定申告、消費税申告、データ出力、サポートなどに制限が設けられていることがあるため、無料かどうかだけで決めないようにしましょう。
- クラウド会計ソフトは安全ですか?
-
サービス側のセキュリティ対策だけでなく、利用者側の管理も重要です。使い回していない強いパスワードを設定し、二段階認証を利用しましょう。複数人で利用する場合は、一つのアカウントを共有せず、利用者ごとに権限を設定するのが安全です。
- 途中で別の会計ソフトへ変更できますか?
-
変更できます。ただし、仕訳データ、開始残高、補助科目、取引先情報、証憑データなどをどこまで移行できるかは製品によって異なります。移行前にデータを出力し、新しいソフトで正しく取り込めるかを確認してください。
まとめ|クラウド会計ソフトは無料体験で操作性まで確認して選ぶ
クラウド会計ソフトは、銀行口座やクレジットカードの明細取得、複数端末からの利用、税理士や担当者とのデータ共有などにより、記帳や経理業務を効率化できるサービスです。
一方で、インターネット環境や動作速度に左右されることがあり、毎月または毎年の利用料金もかかります。自動仕訳も必ず正しいとは限らないため、内容を確認せずに登録し続けるのは危険です。
クラウド会計ソフトを選ぶときは、次の順番で確認しましょう。
- 個人事業主向けか法人向けか
- 必要な会計・申告機能があるか
- 利用中の口座や周辺サービスと連携できるか
- 操作方法と動作速度が自分に合うか
- 2年目以降も含めた継続費用はいくらか
評判や料金表だけで決めず、無料体験がある場合は、売上や経費、カード払いなど実際の取引を入力してみてください。画面の見やすさ、入力方法、帳簿の確認しやすさ、動作速度まで確かめることで、自分に合ったソフトを選びやすくなります。
会計ソフトは、正しい帳簿を作るための便利な道具です。自動化できる部分を活用しながら、取引内容や残高を確認する習慣もあわせて持つことが大切です。

