個人事業主として事業を続けていると、「確定申告を自分でするのが不安」「記帳が追いつかない」といった理由から、税理士への依頼を考える場面が出てきます。ただ、初めて税理士を探すときは、何を基準に選べばよいのか分かりにくく、料金の安さだけで決めてしまいがちです。
この記事では、初めて税理士を探す個人事業主に向けて、探す前に整理しておきたいこと、選ぶときのポイント、費用が変わる要因、面談や契約前に確認したい項目、探し方までを順番に整理します。
- 税理士を探す前に整理しておきたいこと
- 個人事業主が税理士を選ぶときの6つのポイント
- 税理士費用が変わる要因と、見積もりを比べるときの確認点
- 面談・契約前に確認したい項目と、税理士の探し方
結論|個人事業主の税理士は費用・対応範囲・相性で選ぶ
個人事業主が税理士を選ぶときは、料金の安さだけでなく、「何を依頼できるのか」と「実際の担当者に相談しやすいか」をあわせて確認することが大切です。
同じ月額料金の契約でも、含まれる業務の範囲は事務所によって異なります。また、面談で話した税理士と、日常的にやり取りする担当者が別の人になることもあります。契約してから「思っていた内容と違った」とならないよう、依頼したい業務を先に整理し、見積もりの中身と担当体制を確認したうえで比較するのがおすすめです。
個人事業主に税理士は必要?いつから探す?
税理士への依頼は義務ではなく、必要かどうか・いつ頼むかは事業の状況によって変わります。ここでは、判断の目安になる考え方を整理します。
個人事業主に税理士との契約義務はない
個人事業主が税理士と契約しなければならない、という決まりはありません。記帳や確定申告を自分で行っている個人事業主も多く、会計ソフトを使えば、自分で申告書を作成することもできます。
一方で、税務の判断に迷うことが増えてきた、記帳や申告に時間を取られて本業に集中できない、といった状況であれば、税理士への依頼を検討する価値があります。契約するかどうかは、「自分でできるか」だけでなく、「自分でやることが合理的か」という視点でも考えるとよいでしょう。
税理士への依頼を検討したいタイミング
依頼を検討するタイミングは一律に決まっているわけではありませんが、たとえば次のような状況になったときは、一度考えてみるきっかけになります。
- 売上や取引数が増え、記帳や確定申告にかかる時間が負担になってきた
- 経費にできるかどうか、税務上の扱いに迷う取引が増えてきた
- 消費税の申告が必要になるなど、手続きが複雑になった
- 融資や法人化など、事業の方向性について相談したいことが出てきた
どのタイミングで依頼するかは、事業の状況と「何を任せたいか」によって変わります。記帳を自分で続けるか外注するかで迷っている場合は、記帳は自分でどこまでできる?難しくなる目安と外注を考えるタイミングもあわせて参考にしてみてください。
税理士を探す前に整理しておきたいこと
候補を探し始める前に、依頼したい内容・自分で行う範囲・予算の3点を整理しておくと、見積もりの比較や面談での質問がしやすくなります。
税理士に何を依頼したいか
税理士に依頼できる内容には、確定申告書の作成・提出、日々の記帳、税務に関する相談、税務調査への立ち会いなど、さまざまなものがあります。「確定申告だけお願いしたい」のか、「記帳も含めて任せたい」のか、「月に一度は経営や税金の相談をしたい」のかによって、合う税理士も料金も変わってきます。
まずは、今困っていることと、税理士に期待していることを書き出してみると、依頼内容を具体的にしやすくなります。
自分で行う業務と任せる業務を分ける
依頼したい内容が見えてきたら、自分で続ける業務と税理士に任せる業務を分けておきましょう。たとえば、「日々の記帳は会計ソフトで自分で行い、確定申告書の作成とチェックを依頼する」「領収書や通帳のコピーを渡し、記帳から申告まで任せる」など、分け方によって税理士側の作業量が大きく変わります。
自分で行う範囲が広いほど料金は抑えやすくなる一方、自分の手間は残ります。どこまでなら無理なく続けられるかを基準に考えると、分け方を決めやすくなります。
予算と相談頻度を決める
年間でどのくらいの費用なら出せるか、どのくらいの頻度で相談したいかも、事前に考えておきたいポイントです。毎月の顧問契約で継続的に相談できる体制を望むのか、年に一度の確定申告のときだけ関わってもらえれば十分なのかで、選ぶ契約形態が変わります。
予算と相談頻度を決めておくと、見積もりを受け取ったときに「この金額でこの範囲なら妥当か」を判断しやすくなります。
個人事業主が税理士を選ぶ6つのポイント

依頼したい内容が整理できたら、候補の税理士を次の6つの観点で比べてみましょう。
個人事業主や同業種への対応経験があるか
税理士にも、法人の顧問を中心としている事務所、相続税を得意とする事務所など、それぞれ得意分野があります。個人事業主の確定申告や記帳の経験が豊富か、自分と同じ業種の顧客を担当したことがあるかを確認しておくと、業種特有の経費や取引についても相談しやすくなります。
事務所のホームページで対応業種や顧客層を確認したり、面談で「個人事業主の顧客はどのくらいいるか」「同業種の対応経験はあるか」を聞いたりしてみるとよいでしょう。
依頼できる業務と対応範囲が明確か
契約に含まれる業務の範囲がはっきりしているかも重要です。「顧問契約」といっても、記帳が含まれるのか、確定申告は別料金なのか、相談は何回まで対応してもらえるのかは、事務所によって異なります。
対応範囲があいまいなまま契約すると、「これも含まれていると思っていた」という行き違いが起こりやすくなります。依頼したい業務が含まれているかを、見積もりや契約書の段階で確認しておきましょう。
料金と追加費用が分かりやすいか
月額料金だけでなく、確定申告の報酬、記帳代行の料金、年末調整や税務調査の立ち会いなど、別途かかる費用があるかどうかも確認が必要です。月額が安く見えても、確定申告の報酬が別にかかり、年間で見ると想定より高くなるケースもあります。
料金は月額ではなく年間の総額で比べると、事務所ごとの違いが分かりやすくなります。
連絡方法と回答の早さが自分に合うか
電話、メール、チャットツール、対面など、税理士とのやり取りの方法は事務所によって異なります。日中は本業で電話に出にくい人であれば、チャットやメールで相談できる事務所の方が使いやすいかもしれません。
あわせて、質問してからどのくらいで回答をもらえるのかも確認しておきましょう。急ぎの判断が必要な場面で回答が遅いと、相談そのものがしにくくなります。
会計ソフトや資料共有方法に対応しているか
すでに会計ソフトを使っている場合は、その会計ソフトに税理士が対応しているかを確認しておくと安心です。対応していないソフトだと、データの受け渡しに手間がかかったり、ソフトの変更を求められたりすることがあります。
領収書や通帳などの資料を、郵送で送るのか、クラウド上で共有するのか、という資料のやり取りの方法も、日々の手間に関わるポイントです。これから会計ソフトを選ぶ場合は、クラウド会計ソフトとは?メリット・デメリットと失敗しない選び方を解説も参考にしてみてください。
税理士本人と実務担当者を確認する
面談で話した税理士が、契約後に日常の担当者になるとは限りません。会計事務所での実務経験の中でも、面談は代表税理士が行い、日常の記帳チェックや質問への対応は事務所のスタッフが担当する、という形を多く見てきました。特に大きな事務所では、スタッフが担当するケースが多い印象です。
担当者が変わると、相談のしやすさも変わる可能性があります。そのため、面談の段階で「日常のやり取りは誰が担当するのか」「税理士本人に相談できるのはどんな場面か」を確認しておくと、契約後のイメージと実際のずれを小さくできます。
なお、若手のスタッフが担当になった場合でも、上司がついてチェックする体制をとっている事務所は多く、処理の質は担当者の年齢だけでは判断できません。どのような体制で業務を行っているかは事務所によって異なるため、年齢よりも、チェック体制や相談時の対応方法を確認することをおすすめします。
個人事業主の税理士費用は何で変わる?
税理士費用は、契約の形態・依頼する業務の範囲・事業の規模によって変わります。相場の数字だけを見るのではなく、何によって金額が変わるのかを理解しておくと、見積もりを比べやすくなります。
顧問契約と確定申告だけの依頼では料金が異なる
毎月継続して記帳のチェックや相談に対応してもらう顧問契約と、年に一度の確定申告だけを依頼する形とでは、料金の体系が大きく異なります。顧問契約は月額の報酬に加えて確定申告の報酬がかかることが多く、確定申告だけの依頼は1回ごとの報酬になるのが一般的です。
どちらが合っているかは、日常的な相談がどの程度必要かによって変わります。相談したいことが年に数回程度であれば、確定申告だけの依頼から始めるという選択肢もあります。
記帳代行を含めるかどうかで変わる
日々の記帳を自分で行うか、税理士に任せるかによっても、料金は変わります。記帳代行を含める場合は、その分の作業量が料金に反映されるため、自分で記帳する場合と比べて費用は高くなる傾向があります。
記帳代行の料金は、仕訳の件数によって段階的に設定されていることも多いため、見積もりを取る際は、1か月あたりのおおよその取引件数を伝えられるようにしておくとスムーズです。
売上・取引量・相談頻度でも変わる
売上の規模や取引の量が多いほど、確認すべき資料や処理の量が増えるため、料金は上がりやすくなります。また、消費税の申告が必要かどうか、面談の回数を多く希望するかどうかなども、料金に影響します。
見積もりを依頼するときは、年間の売上の目安、取引件数、消費税の課税事業者かどうか、希望する相談頻度などを伝えると、実態に近い金額を出してもらいやすくなります。
丸投げ費用は依頼範囲をそろえて比較する
記帳から確定申告まですべて任せる、いわゆる「丸投げ」の料金は、事務所によって含まれる内容が異なるため、金額だけを並べて比べると判断を誤りやすくなります。たとえば、領収書の整理まで対応するのか、通帳や明細の入手は自分で行う必要があるのか、といった違いがあります。
複数の事務所から見積もりを取る場合は、同じ依頼範囲・同じ条件で見積もりを出してもらい、そのうえで年間の総額を比べるようにしましょう。
税理士との面談・契約前に確認したいこと
面談と契約書の確認は、契約後の行き違いを防ぐための大切な機会です。聞きたいことを事前にまとめておきましょう。
面談で質問したい項目
面談では、料金だけでなく、契約後の対応体制を具体的にイメージできるような質問をしておくと安心です。
- 日常のやり取りを担当するのは誰か(税理士本人か、スタッフか)
- 質問したときの回答方法と、回答までのおおよその期間
- 節税や事業の進め方などについて、どの程度の提案を期待できるか
- 個人事業主や同業種の顧客の対応経験
- 使っている会計ソフトや、資料共有の方法に対応しているか
特に「提案」については、期待する内容を具体的に伝えておくことをおすすめします。会計事務所での実務経験の中では、税理士を変更する顧客を見てきましたが、その理由として「提案がない」という声が多くありました。申告書の作成だけを期待しているのか、節税や経営面の助言まで期待しているのかによって、合う税理士は変わります。
契約書と見積書で確認したい項目
口頭で説明を受けた内容が、契約書や見積書にも反映されているかを確認しましょう。確認しておきたい主な項目は次のとおりです。
- 月額報酬に含まれる業務の範囲
- 確定申告の報酬や記帳代行など、別途かかる費用
- 対応範囲外の業務を依頼した場合の追加料金
- 相談の回数や方法に制限があるか
- 契約期間と、契約を終了する場合の手続き・資料の返却方法
契約終了時の扱いは見落としやすい項目です。将来的に税理士を変更する可能性もふまえて、解約の申し出の時期や、預けた資料・データの返却方法を事前に確認しておきましょう。
税理士の探し方は主に3つ
税理士の探し方には、主に自分で探す方法、紹介してもらう方法、紹介サービスを利用する方法の3つがあります。それぞれに利点と注意点があるため、状況に合わせて使い分けるとよいでしょう。
自分で税理士事務所を探す
インターネットで検索し、事務所のホームページを見比べて問い合わせる方法です。料金体系や得意分野、対応している会計ソフトなどを自分のペースで確認でき、気になる事務所に直接連絡できるのが利点です。
一方で、候補を探して比較する手間は自分でかける必要があります。ホームページに料金が詳しく書かれていない事務所も多いため、問い合わせや面談を重ねて比べることになります。
知人や取引先から紹介してもらう
すでに税理士と契約している知人や取引先から紹介してもらう方法です。実際に契約している人から、対応の様子や相談のしやすさを聞けるのが利点です。
ただし、紹介してくれた人に合っている税理士が、自分にも合うとは限りません。また、紹介を受けた手前、合わないと感じても断りにくくなることがあります。紹介を受けた場合でも、依頼したい業務や料金を確認し、他の候補と比べる姿勢を持っておくと安心です。
税理士紹介サービスを利用する
希望する条件を伝えて、条件に合う税理士を紹介してもらう方法です。例として、税理士ドットコムの税理士紹介サービスでは、地域、依頼したい業務、予算、事業の内容などを伝えると、条件に合う税理士を紹介してもらえます。紹介を受けること自体に利用者側の料金はかからず、紹介された税理士を断ることもできると案内されています。
自分で一から探す手間を減らせる一方で、紹介料が無料でも、税理士と契約した場合の顧問料や報酬は別途かかります。契約料金は、紹介された税理士ごとに確認する必要があります。また、ちょっとした税務相談だけを目的とした利用は、基本的に受け付けていないとされているため、単発の相談だけをしたい場合には向いていません。
紹介された税理士であっても、相性が合うかどうかは実際に話してみないと分かりません。紹介を受けた後も、この記事で紹介したポイントを参考に、面談で対応範囲や担当体制を確認してから契約を判断しましょう。
費用だけで税理士を選ぶと後悔しやすい理由
料金は大切な比較材料ですが、費用の安さだけを基準にすると、契約後に不満を感じやすくなります。よくある3つの理由を見ていきます。
安くても必要な業務が含まれていない場合がある
料金が安い契約は、その分、対応範囲が限られていることがあります。たとえば、月額料金には相談対応だけが含まれ、確定申告や記帳は別料金になっている場合、必要な業務を追加していくと、結果的に他の事務所より高くなることもあります。
金額を比べるときは、自分が依頼したい業務がすべて含まれているかを確認し、含まれていない業務を追加した場合の総額で判断することが大切です。
質問しにくいと相談が後回しになる
税理士に質問しにくいと感じていると、「こんなことを聞いてもいいのだろうか」と迷ううちに、相談が後回しになりがちです。その結果、経費の扱いや手続きの判断を自己流で進めてしまい、後から修正が必要になることもあります。
税理士に継続して相談したい場合は、相談できる内容や方法、回答までの目安を契約前に確認しておきましょう。料金とあわせて、実際に質問しやすい相手かどうかも判断材料になります。
契約前と契約後で担当者が変わる場合がある
前述のとおり、面談で話した税理士と、契約後に日常のやり取りをする担当者が異なることがあります。面談の印象だけで決めてしまうと、実際の担当者との相性が合わず、想定していた相談のしやすさと違ったと感じることもあります。
また、担当者は事務所内の人員配置などによって途中で変わる可能性もあります。担当者が変わった場合の引き継ぎ方法や、相談の窓口がどうなるかも、あわせて確認しておくと安心です。
個人事業主の税理士選びに関するよくある質問
最後に、初めて税理士を探す個人事業主が迷いやすい点をまとめます。
- 税理士との初回相談では何を聞けばよいですか?
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料金と対応範囲に加えて、日常の担当者は誰か、質問への回答方法と期間、どの程度の提案を期待できるかを確認しておくと、契約後のイメージをつかみやすくなります。個人事業主や同業種の対応経験も聞いておくとよいでしょう。
- 税理士との面談には何を持っていけばよいですか?
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過去の確定申告書の控えや、売上・経費のおおよその分かる資料があると、事業の規模や状況を伝えやすくなります。あわせて、依頼したい業務や聞きたいことをメモにまとめておくと、面談を効率よく進められます。面談が決まれば、なにが必要か教えてくれるはずです。
- 確定申告だけ税理士に依頼できますか?
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確定申告だけの依頼に対応している税理士事務所もあります。ただし、対応しているかどうかや料金は事務所によって異なり、繁忙期は受付を締め切っている場合もあるため、早めに問い合わせておくと安心です。
- 税理士は自宅や事業所の近くから選ぶべきですか?
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対面で相談したい場合や、資料を直接持ち込みたい場合は、近くの事務所の方が便利です。一方、メールやチャット、オンライン面談で対応している事務所であれば、距離はそれほど気にならない場合もあります。自分が希望するやり取りの方法に合わせて判断しましょう。
まとめ|費用だけでなく対応範囲と相性を確認して税理士を選ぼう

個人事業主が税理士を選ぶときは、料金の安さだけで判断せず、依頼したい業務が含まれているか、実際の担当者に相談しやすいかをあわせて確認することが大切です。
まずは、税理士に依頼したい業務と、自分で行う業務、予算と相談頻度を整理しましょう。そのうえで、候補の事務所から同じ条件で見積もりを取り、年間の総額と対応範囲を比べます。面談では日常の担当者や回答方法、期待できる提案の範囲を確認し、契約書では追加料金や契約終了時の扱いまで目を通しておくと、契約後の行き違いを防ぎやすくなります。自分で探す、紹介を受ける、紹介サービスを使うなど、探し方は状況に合わせて選び、納得できる税理士を見つけてください。

