個人事業主として事業を始めると、「クレジットカードは私用と分けた方がいいのか」「今のカードのままではいけないのか」と迷う場面が出てきます。特に、日々の買い物や経費の支払いにカードを使っていると、記帳の際にどこまで分ければよいのか分かりにくくなりがちです。
この記事では、個人事業主がクレジットカードを分けるメリット・デメリットから、分けていない場合の仕訳の考え方、会計ソフトと連携するときのポイント、事業用カードの選び方まで整理します。
- クレジットカードを分けるメリット・デメリット
- カードを分けていない場合の仕訳の考え方
- 会計ソフトと連携するときにカードを分ける意味
- 事業用に使えるクレジットカードの具体例
結論|個人事業主はクレジットカードを事業用と私用で分けるのがおすすめ
結論からお伝えすると、個人事業主はクレジットカードを事業用と私用で分けておくことをおすすめします。ただし、必ず別のカードを作らなければならない、というものではありません。
カードを分けておくと、記帳や確認の作業が楽になり、会計ソフトとの連携もしやすくなります。一方で、カードを分けていない場合でも、事業に関する支払いと私的な支払いを正しく区分して記帳する必要があること自体は変わりません。以下では、分けるメリット・デメリットと、分けていない場合の処理方法を順番に見ていきます。
個人事業主がクレジットカードを分けるメリット

カードを分ける一番のメリットは、記帳の手間と確認作業を減らせることです。
経費と私的支出を見分けやすくなる
カードが1枚にまとまっていると、日用品の買い物と事務用品の購入が同じ明細に並び、1件ずつ「これは経費か、私用か」を判断しながら確認する必要があります。事業用カードを分けておけば、その明細に載っている支払いは基本的に事業関連の支払いに絞られるため、1件ごとの判断そのものを減らせます。
記帳や確定申告の負担を減らせる
たとえば、私用と事業用の支払いが同じカードに混ざっていると、月20件の明細から事業関連の数件だけを毎回探し出す作業が発生します。事業用カードを分けておけば、その明細を上から順に記帳していくだけで済むため、確定申告のときにまとめて確認する場合でも、見る範囲そのものが絞られ、作業時間を短縮しやすくなります。
会計ソフトとの連携がしやすくなる
私用と事業用が混ざったカードを会計ソフトに連携すると、コンビニでの買い物やスーパーでの支払いなど、私的な明細も同じように取り込まれ、そのつど除外したり事業主貸で処理したりする振り分けが必要になります。事業用カードだけを連携しておけば、取り込まれる明細のほとんどが最初から事業関連の支払いになるため、この振り分け作業そのものが少なくなります。
事業のお金の流れを把握しやすくなる
今月の経費が多いのか、来月の支払いに備えてどれくらい資金を確保しておけばよいのか、といった判断は、事業用カードの利用額を見るだけでおおまかにつかめます。私的な支出が同じカードに混ざっていると、合計の利用額を見ても、そのうちどこまでが事業の動きなのかが分からず、状況を把握するために結局明細を1件ずつ確認し直すことになります。
クレジットカードを分けるデメリット
カードを分けることにはメリットだけでなく、管理面での負担も伴います。
カードの管理が増える
持つカードの枚数が増えると、把握しておくべきことも増えます。カードごとに支払日が異なる場合は、口座残高の管理もそれぞれ必要になりますし、利用明細を確認するログイン先やアプリも増えます。紛失や不正利用があった場合の連絡先も、カードの数だけ増えることになります。家計簿アプリや会計ソフトで複数カードの明細をまとめて確認できるようにしておくと、この管理の手間はある程度減らせます。
年会費がかかる場合がある
カードによっては年会費が発生します。個人事業主向けのビジネスカードには年会費が永年無料のものも多くありますが、ゴールドカードなど上位ランクのカードでは、年会費がかかったり、一定額以上利用した年だけ翌年以降無料になったりする仕組みのものもあります。ポイント還元率や付帯サービスに魅力を感じても、年会費に見合うだけ使う見込みがあるかどうかを、事前に確認しておくと安心です。
ポイントが分散することがある
これまで1枚のカードにまとめていた支払いを事業用・私用に分けると、ポイントも2枚のカードに分散します。1枚に集中させていた場合と比べると、まとまった特典に交換しにくくなることがあります。カードによって還元率やポイント付与条件が異なるため、分けることでポイント面が有利になるか不利になるかは一概にはいえません。同じカード会社・同じポイントプログラムのカードを事業用・私用それぞれで選ぶと、ポイントを合算できる場合もあるため、気になる方は各カード会社の仕様を確認しておくとよいでしょう。
クレジットカードを分けた方がいい人・無理に増やさなくてもよい人
カードを分けるかどうかは、事業の支払い状況や記帳の負担感によって判断すると考えやすくなります。
分けるメリットが大きい人
次のような方は、カードを分けるメリットが大きいといえます。
- カード払いの経費が多い
- 会計ソフトへカードを連携する
- 私用と事業用の取引が混ざっている
- 毎月の記帳に時間がかかっている
無理にカードを増やさなくてもよい人
事業に関する取引数がもともと少なく、今使っているカードでも事業分の支払いを明確に区分して記帳できている場合は、無理に新しいカードを増やす必要はありません。たとえば、事業関連の支払いが月に数件程度で、明細を見ればどれが事業用か一目で判断できる場合は、無理にカードを増やさなくても大きな支障は出にくいでしょう。件数が増えてきたり、判断に迷う支払いが出てきたりしたタイミングで、カードを分けることを検討すれば十分です。この場合も、事業の支払いと私的な支払いをきちんと分けて記帳できていることが前提になります。
クレジットカードを分けていない場合の仕訳方法
カードを分けていない場合は、必要に応じて『事業主借』『事業主貸』などを使い、事業と私用を区分して記帳します。
個人用カードで事業の経費を支払った場合
個人用のカード、つまり事業主個人のお金で事業上必要な経費を支払った場合は、一般的に「事業主借」を使って処理します。事業主が事業に対してお金を貸した、という形で記帳する考え方です。
たとえば、個人用カードで10,000円の事務用品を購入した場合の仕訳例は、次のようになります。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 消耗品費 | 10,000円 | 事業主借 | 10,000円 |
事業用カードでプライベートの支払いをした場合
逆に、事業用カードで私的な支払いをした場合は、一般的に「事業主貸」を使って処理します。事業主が事業のお金を私的に引き出した、という形で記帳する考え方です。
たとえば、事業用カードで5,000円の私物を購入し、引落口座が事業用口座である場合、カード利用時と引落時に分けて、次のように仕訳します。
カード利用時
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 事業主貸 | 5,000円 | 未払金 | 5,000円 |
引落時
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 未払金 | 5,000円 | 普通預金 | 5,000円 |
この支払いは事業の経費にはならないため、経費の勘定科目では処理しない点に注意しましょう。
カードを分けていなくても事業と私用を区分して記帳する
ここまで見てきたとおり、大切なのはカードを分けているかどうかよりも、事業取引と私的取引を正しく区分できているかどうかです。カードを分けていなくても、事業と私用を区分して記帳することはできます。1件ずつ用途を確認し、事業主借・事業主貸を使って処理する形になるため、個別の処理に迷う場合は、税理士に確認しておくと安心です。
会計ソフトと連携するなら事業用カードを分けると管理しやすい

クレジットカードを会計ソフトに連携する場合、事業用カードを分けておいたほうが、連携後の確認作業を減らしやすくなります。
会計事務所での実務では、プライベートと事業用のクレジットカードを一緒に使っている顧客が多く見られました。私用と事業用が同じカードに混ざっていると、明細を1件ずつ確認して事業関連の支払いだけを選び出す必要があり、明細だけでは用途を判断できない場合は、本人へ確認しなければならないケースもありました。
個人カードをfreeeに、法人カードをマネーフォワードに同期するなど、会計ソフト側でカードを連携させて記帳する実務も行ってきましたが、私用と事業用が混ざったカードを連携すると、私用明細の除外や事業主勘定を使った処理が増える傾向がありました。自動連携をしても、最終的な仕訳内容の確認は必要になります。
つまり、自動連携すればすべての作業が終わるわけではなく、あらかじめカードを事業用と私用で分けておくほうが、連携後の確認作業そのものを減らしやすいというのが実務上のポイントです。クラウド会計ソフトとは?メリット・デメリットと失敗しない選び方を解説もあわせてご覧いただくと、連携の仕組みそのものを確認しやすくなります。
事業用クレジットカードを選ぶときのポイント
事業用カードを選ぶときは、年会費・利用枠・会計ソフトとの連携状況の3点を中心に確認すると選びやすくなります。
年会費を確認する
個人事業主向けのビジネスカードには、年会費が永年無料のものも多くあります。まずは年会費がかからないカードを候補にし、そのうえで還元率や付帯サービスを比較すると、コストをかけずに始めやすくなります。年会費がかかるカードを検討する場合は、年会費以上のメリットを実際に使う見込みがあるかどうかで判断するとよいでしょう。
利用可能枠が事業の支払いに足りるか確認する
仕入れや外注費など、まとまった金額をカードで支払う場合は、利用可能枠が事業の支払いに見合っているかを確認しておきましょう。利用可能枠はカード会社の審査などによって決まるため、事業で必要になる支払額に対して十分な枠が確保できそうか、申し込み前に確認しておくと安心です。
会計ソフトとの連携状況を確認する
普段使っている会計ソフトとカードが連携できるかどうかも、選ぶ際のポイントになります。連携の方法には、カード会社と会計ソフトがAPIで直接つながっているタイプと、明細をCSVなどでダウンロードして取り込むタイプがあり、更新頻度や自動で取得できる明細の範囲もカードによって異なります。対応状況や連携方法の詳細は、カード会社や会計ソフトの公式サイトで確認しておきましょう。
ポイントや付帯サービスだけで選ばない
ポイント還元率や付帯サービスは魅力的ですが、それだけを基準に選ぶと、あとになって「利用枠が足りない」「会計ソフトと連携できない」といった実務上の不便に気づくことがあります。事業用カードは長く使い続けるものなので、まずは年会費・利用枠・会計ソフト連携といった実務面を確認したうえで、その中からポイントや付帯サービスで比較する、という順番で選ぶと後悔しにくくなります。
事業用に分けるなら個人事業主向けカードも選択肢
事業用カードを分ける場合、個人事業主向けに用意されているビジネスカードも選択肢になります。ここでは代表的な3枚を、具体例として簡潔に紹介します。カードの選定は、ご自身の利用状況に合わせて検討してください。
三井住友カード ビジネスオーナーズ(一般)
法人代表者だけでなく個人事業主も申込対象になっているカードです。年会費は永年無料で、登記簿謄本や決算書類の提出が不要な点も特徴です。
JCB Biz ONE 一般
法人代表者・個人事業主向けのカードで、フリーランスや副業での開業者も申込対象に含まれています。一般カードは年会費永年無料です。
セゾンコバルト・ビジネス・アメリカン・エキスプレス®・カード
個人事業主、フリーランス、経営者を対象としたビジネスカードで、年会費は無料です。決算書や登記簿謄本の提出が不要な点も特徴です。
いずれのカードも、年会費や申込条件、付帯サービスは変更されることがあるため、申し込み前に必ず各カード会社の公式サイトで最新情報をご確認ください。
銀行口座も事業用と私用で分けるとさらに管理しやすい
クレジットカードだけでなく、引き落とし口座も事業用に分けておくと、お金の流れ全体がさらに把握しやすくなります。
事業用カードの引き落とし先を私用の口座にしていると、口座の入出金にも私的な取引が混ざり、結局そちらの確認作業が発生してしまいます。事業用口座は分けるべき?お金の流れがすっきりする理由でも触れているとおり、カードと口座をあわせて事業用に整理しておくと、記帳全体の見通しがよくなります。
よくある質問
- 個人事業主は事業用クレジットカードを必ず作る必要がありますか?
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必ず作らなければならないわけではありません。ただし、事業用カードを分けておくと、記帳や確認の作業を減らしやすくなります。
- 開業前から持っている個人カードを事業用に使えますか?
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税務上は、個人用カードで支払った場合でも、事業上必要な支出であれば必要経費として処理できます。ただし、事業利用の扱いはカード会社の利用規約によって異なるため、利用前にカード会社の規約を確認しておく必要があります。
- 個人用カードで経費を払った場合も経費にできますか?
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個人用カードで支払った場合でも、事業上必要な支出であれば経費として計上できます。その際は「事業主借」を使って記帳するのが一般的な処理です。
- 事業用カードで私物を買ってしまった場合はどうしますか?
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事業用カードで私的な支払いをした場合は、経費にはせず、「事業主貸」を使って処理するのが一般的です。
- クレジットカードを会計ソフトに連携すれば記帳は不要になりますか?
-
連携すれば明細の取り込みは自動化できますが、記帳がすべて不要になるわけではありません。取り込まれた内容の確認や、私用分の除外などの作業は引き続き必要です。
まとめ|事業用と私用を分けると経理をシンプルにしやすい

クレジットカードを事業用と私用で分けておくと、記帳や確認の作業を減らしやすくなります。特に会計ソフトへ連携する場合は、事業専用カードのほうが管理しやすい傾向があります。
一方で、カードを分けていない場合でも、事業に関する支払いと私的な支払いを正しく区分して記帳する必要があります。ご自身の取引量や記帳の負担感に応じて、無理のない形で事業用カードを検討してみてください。

